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るのでありまして、日本に来て何をするのか、日本人のようにお寺を回る事が好きな人もいますが、いろいろな楽しみを見つけていく。その中で共通な事は、おいしいものを食べる事であり、そして美しいものを見る事であり、そして芸術的なものを見るという事であろうと思いますが、これも人によって随分偏りといいましょうか、特徴があるという事になります。
今日では、さらにそれにスポーツ、それも乗馬ですとか、スカイダイビングですとか、スキューバーですとか、いろいろな新しい遊びも含めてやって来る人達はそういうものを試みる、あるいは自分が得意とするところを日本ででもやってみたいという希望を持つ人が増えているのです。
日本人も巡回型のものから、じっくりそういう様に焦点を決めて博物館めぐりをする、あるいは古い遺跡の場合ですと、その歴史的な背景というものを誰か詳しい人に話を聞かせてもらうというようなツアーを非常に好む人たちが増えております。まだ数は少数派でありますが、手つかずの自然、貴重な文化遺跡を求めて、観光施設としては非常に劣っているとしか言いようのない所へ臆せず出掛けていって、変わった体験をして帰ってきて興奮をして、また行くと言っている様な人たちも出てきている。その様に、旅のパターンも好みも非常に多様になってきている。以前のように、これが観光だという様なものではなくて、多様性というものが1つの今日の特徴になっていると思います。
コンベンションにいたしましても、国際会議あるいは見本市、コンベンション、メッセというものも、今日では誰が主催地を決めるかというと、一緒にお出でになる奥さんとか、お嬢さんとかが実質的にお決めになっている。つまり、オプショナルツアー、会議の前や後、もちろん会議中に同行した奥さんやお嬢さんのために用意された楽しみの為に、あそこはつまらないからこっちがいいよという事で決められる。主人公の旦那さんの国際会議というのはどうせ箱の中でやっているのですから、どこも大して変わりはないわよと言う様な事で、場所が選ばれる時代になってきている。決定権は明らかに、旦那さんから奥さんあるいはお嬢さんに移ってきているのです。
また、民間の企業でも出張という機会がありますが、ビジネスで行ったついでに観光をするというのは許されるのでありますが、それがあまり派手だと「おい、お前、観光に行くわけではあるまいし、少しは計画をちゃんとしろよ」という事になるのです。
実は今、民間企業の人達の勉強会を主催をしているのですが、先だってこの人達を連れてアミューズメントビジネスを勉強しようという事で、ラスベガスのツアーを試みたのであります。たちまち企業側から反発がきまして、「お前、何を勉強しているのだ」ということで、結局行けなかった人が相当出ました。こういう会社は21世紀には取り残されてしまうだろうと思っております。
実は、この楽しませる為の装置としてのラスベガスは、人工的に非常にうまくできているのです。つまり、昔のマフィアが干渉しておりました様な時代と違いまして、今では家族ぐるみで遊べるところになっています。ホテルでは趣向をこらしたショーをしていますし、そして人々を楽しませる為にさまざまな事をやっています。そしてカジノも全く安全ですし、賭けたもののリターン、賭け率というものがどれくらいかを全部委員会の管理のもとで直ちに数字としてあらわすようになっています。そんな実態を全く知らないのです。
とにかくラスベガスに行ったというと、何か日本で記事になるのは、どこかの代議士が何百万円すったという様な、そんな話しか知らない。実は随分と変わってしまっている。
その一方ラスベガスの場合は、そこの市民がそういう賭博をする場所に入ろうと思うと市長の特別許可がいるのです。友達が来ましたから入りますという訳にはいかない。その時は貯金通帳にいくら残高があるかをきちっと調べられるという有名な話がありますが、それぐらいに人工的につくられたものです。
しかし、そういうところは稀でありまして、基本になっているのは、やはり街並みの美しさあるいは目然の美しさ、そういうものが基本になっている。特に、ヨーロッパの街は街並みの美しさという事では大変すばらしいものがあります。ドイツなどはご存じの通り戦争で焼ける前の街並みを復元するという事にどれだけ血道をあげているか、写真集に左のぺージが以前のもの、右のぺージが今日のものという具合に比較しているものがあります。左右を見比べると、同じような街並みを再現させる為に苦労しているのがわかります。
もっともその街並みを大いに害していたのは最近までの話でありますが、日本の企業の広告です。戦後の街並みには日本の広告が大きな顔をしていて、風景を害しています。そういう事を除きますと、非常に古いものを復元するという事にエネルギーを使っている。
日本では、自分の家に何を干そうと勝手ではないかと言いますが、ドイツの場合ですと外に見え

 

 

 

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